TeaHouse TAKANO   

◇◆◇◆◇高野の独り言◇◆◇◆◇

◇高野の独り言 目次◇

第3回 フレーバードティー

 皆様もご承知の通りフレーバードティーとは、天然、人工香料を問わず茶葉に香りをつけた着香茶のことですが、若い人を中心に根強い人気があるようです。
 まず、素朴な疑問ですが何故おいしい紅茶に化学薬品を使って香りをつけなければいけないのか…と言うことです。香料は濃縮されていて茶葉に直接つけることが出来ません、したがって香料を化学溶液に溶かしてぐるぐる回るドラムの中で茶葉に香りをつけて行きます。化学溶剤は蒸発して香りだけが残ると言う仕組みです。最近ではグラニュー状にした香料で着香していることもあります。化学溶剤や人工香料は体には悪影響がないとメーカーは言っておりますが、現代人特に若い人達はファーストフードやお菓子などからどんどん化学物質を摂取しており体内でのカクテル効果によりどのような悪影響が起きるかよくわかっていないのが現状です。
 次に、着香茶はたいていは製造過程により茶葉が黒ずんでおり、点てると紅茶本来の渋みが無く味も希薄です、当然紅茶本来の香りはわらず人工的な香料の香りしかしません。

 我々は長い間、緑茶を飲んできましたが緑茶に香料を添加したりせず自然な状態で楽しんできました。茶葉に香料をつける着香茶文化は元々日本には無く西欧のものと考えています。西欧の人達の飲料文化は基本的にはコーヒーにあると思います。彼らは「お茶」をオリエンタルなものとしてとらえ、自分達の生活文化にあった形で取り入れた結果、着香茶が生まれたものではないでしょうか。もちろん文化ですからその国で変化、発展していくことは結構ですが、イギリスやニュージーランドのように紅茶本来の持つ旨さを生かした楽しみ方が大切です。
 どんな紅茶をどのように飲もうが大きなお節介と思うかもしれませんが、紅茶大好き人間にとっては着香茶だけは黙っていられません。
 ジャスミン茶やミント、シナモン等のスパイスを使って点てた紅茶は着香茶とは言いません。このようなお茶の楽しみ方はとても良いと思います。

第4回 紅茶の渋みはお嫌いですか?

30年近く紅茶の仕事に就いていますが、昔から紅茶の渋味に対してあまり好ましくない印象をお持ちの方が多いようです。
 実は、渋みは香りの成分と抱き合わせのようなもので表裏一体なのです。したがって香りの良い茶葉は基本的に渋いという事になります。そこで渋みの質が問われることになりますが、ここが一番大切なことなのです。渋みには好ましい渋みともう二度と味わいたくない渋み、いわゆる歯茎にべったりと貼りつく渋柿のようなものはいやです。良い渋みとは歯茎がキュッと締まる収斂性があり、後味にざらつき感が無く少し甘さが残るものです。

 以前から申し上げていますが、これらの渋みの旨さを理解できる人は「丁寧な生活」をしている人達です。子供の頃からいろいろな味を経験した人はこの旨さがわかるのです。ファーストフード大好き人間にはちょっと理解出来ないと思います。
 紅茶の適度な渋みは旨さの源泉とお考え下さい。

第5回 ミルクが先か後か?

2003年6月25日『おいしい紅茶はミルクが先 英王立科学会が結論』という記事が配信されました。記事をそのまま紹介します。

【ロンドン24日共同】カップに先にミルクを入れてから紅茶を注ぐのがおいしいミルクティーのコツ。紅茶文化の本場、英国の王立科学会は24日、「完ぺきな紅茶の入れ方」を発表した。
 あらかじめ温めた陶製のポットにティーバッグでないアッサム産の葉を入れ、ミネラル分の少ない軟水を沸かしたお湯を注いで3分間待つ。できた紅茶は陶製のカップに入れ、熱すぎると音を立ててすすることになるため、60度から65度の温度になるのを待って飲む。
 カップに注ぐのは紅茶が先かミルクが先かは紅茶好きの間で長年の論争となってきたが、熱い紅茶の中にミルクを注ぐとタンパク質が変質して風味を害しやすいことが化学分析で判明し、冷たいミルクをまずカップに入れてからお茶を注ぐのが好ましいと結論づけた。(共同通信)

 この問題は長い間日本でも論争となってきましたが、私は以前から次のように考えています。

1).日本のミルクはほとんどがホルスタイン牛から搾乳しており、ホモジナイズ(均質化)されていますから脂肪分が分離して容器の上の方に浮いていることはありません。

2).日本の牛乳は96%が超高温殺菌牛乳ですが、これは欧米からみると異常なことです。120度~130度で2秒~3秒殺菌します。実は、この段階で加熱臭が発生しており、この為、こくがある様にも感じます。(いわゆる乳臭さです)
これに対して欧米は低温殺菌牛乳(パスチャライズ牛乳)がほとんどです。63度で30分又は72度で15秒で殺菌をしています。加熱臭で風味が損なわれることなく、脂肪分が高いにもかかわらずさっぱりとした感じですが日持ちが悪いのが難点です。

3).イギリス人は毎日紅茶を点てます、しかもそんなに上等ではないミルクティー用の茶葉(アッサムやケニヤ産のCTC)ですがこれがイギリスの水によく合います。濃さも点てる量も使うポットも決まっていますので、最初にどのくらいのミルクをカップに入れておけば良いのかも判っているのです。

4).日本人はほとんど紅茶をちゃんと点てません。ティーバックをカップの中で少し泳がす程度‐‐ほとんどの方がシャブシャブの色つき水を飲んでいるのが現状ですからいずれの方法でも問題外。

 さて、ちゃんと点てている方はと言いますと、自分の使っている茶葉の適切な量も湯量も特徴など判っているわけですから、ミルクを先に入れた方が良いと思います。ただ先ほども言いましたように、日本の牛乳自体風味が最初から損なわれているのであまり気にしなくても良いと思います。
 ミルクを後から入れた方がよい場合もあります。初めて使う茶葉などはどの程度力があるのか判りませんし、カップに注いだ色も楽しみたいと思う気持ちもよくわかります。

 結論として、日本ではミルクインアフターの方が無難かと思います。旨い牛乳を手に入れるのも大変ですし、とても価格が高いのが難点です。
 私の店では、成分無調整の牛乳をクリーマーに入れてお出ししていますが、お客様はほとんど後からミルクを入れています。